2023年11月、名古屋市中区のマンションで発覚した死体遺棄事件。その衝撃的なニュースの裏で、一人の若者が冤罪に苦しめられていたことをご存じでしょうか。
元ホストクラブ従業員の**小山直己さん(24)**は、殺人と死体遺棄という重大な罪に問われながらも、2024年3月に無罪判決を勝ち取りました。事件の中心にいたのは、被害者である阿部光一さん(42)と、その殺害を自供したとされる内田明日香被告(31)。しかし小山さんは、この事件に巻き込まれただけであり、結果として無実であることが明らかになったのです。
今回は、なぜ小山さんが冤罪で逮捕されたのか? どこの警察署が捜査を行い、誰が主導していたのか? さらに、今後の損害賠償請求の可能性などについて詳しく解説していきます。
■ 事件の概要と小山さんの関与
この事件は、2023年11月、名古屋市中区にあるマンションのクローゼット内で、住人で古物商の阿部光一さんの遺体が発見されたことから始まりました。
被害者の遺体は死後数日が経過しており、現場の状況から**「死体遺棄事件」として捜査が開始**されました。そして、主犯とされたのは内田明日香被告。彼女は「小山直己さんと共に遺体を運んだ」と供述し、小山さんが事件に関与していたと主張したのです。
しかし、小山さんは一貫して**「何もしていない」**と無罪を訴え続けていました。
■ 拘束されたのは愛知県警中警察署
小山さんが取り調べを受けたのは、愛知県警中警察署です。2023年12月10日、同署の一室での任意の取り調べが6~7回目に差しかかっていた頃、突然「今日は長くなりそうだから予定はキャンセルしてほしい」と告げられ、手錠をかけられて逮捕されました。
この時、担当の男性警察官は「刑事の長年の勘でわかる」と述べたとされ、小山さんにとっては全く身に覚えのない罪でありながら、強引な捜査手法がとられていたことが浮き彫りになっています。
■ 物的証拠は乏しく、内田被告の供述が唯一の根拠
小山さんが疑われた主な根拠は、共犯とされる内田被告の供述のみでした。
弁護側は、公判で**「遺体を移動させた部屋の広さでは、2人での作業は物理的に不可能」**と指摘し、実際に再現実験を行いました。その結果、部屋の大きさが足りないことが明らかに。
さらに、内田被告が小山さんに渡したとされる手袋もサイズが合わず、着用不可能だったことが証明されました。こうした点から、内田被告の供述には重大な矛盾があることが判明し、裁判所もこの証言の信ぴょう性を否定するに至ったのです。
■ 名古屋地裁の判断と無罪確定
2024年3月17日、名古屋地方裁判所は、小山直己さんに対して**「無罪」**を言い渡しました。検察側は懲役1年6か月を求刑していましたが、裁判所は「客観的証拠と整合せず、内田被告の供述には虚偽が入り込んでいる可能性がある」と指摘。
名古屋地方検察庁はこの判決に対し控訴を見送り、無罪判決は確定しました。
■ 326日にもおよんだ勾留
小山さんが逮捕されたのは2023年12月10日。保釈が認められたのは、それからなんと326日後のことでした。
約11か月間も自由を奪われ、人権を無視された生活を強いられた彼は、「最初から犯人という前提で話を聞かれ、人として扱われていないように感じた」と語っています。
「閉じ込められるのが苦しすぎて、やっていなくても認めてしまう人もいると思う。冤罪を生み出さないような捜査をしてほしい」と語った言葉は、今の日本の司法制度への深刻な警鐘と言えるでしょう。
■ 刑事の名前や顔は?責任の所在は不明
今回、小山さんを取り調べた愛知県警中署の刑事の名前や顔写真については、公には公表されていません。警察官の個人情報が公開されることは極めてまれであり、特に冤罪事件においても、その責任が個人に追及されることは少ないのが実情です。
この点については、今後の市民・メディアによる追及が必要とされる部分であり、「刑事の勘」だけで人生を左右されるような捜査を防ぐためには、警察組織の透明性と説明責任が不可欠です。
■ 損害賠償請求は可能? 小山さんが取れる法的手段
冤罪が確定した以上、小山さんには国家賠償を請求する権利があります。具体的には以下のような方法が考えられます。
● 刑事補償法に基づく補償
無罪が確定した被疑者は、刑事補償法に基づき、1日あたり最大1万2500円の補償金を国に請求できます。小山さんの場合、勾留日数が326日であるため、最大で約400万円程度の補償が支払われる可能性があります。
● 国家賠償請求訴訟
この補償とは別に、小山さんが警察や検察の違法な捜査・起訴に対して国家賠償請求訴訟を起こすことも可能です。近年でも、同様の冤罪事件で数千万円単位の賠償が認められたケースもあります。
■ 世間の声と再発防止への期待
この事件を報じた読売新聞の取材に応じた小山さんは、現在も精神的なダメージから回復しきっていない様子です。SNSでも、「冤罪は本当に怖い」「警察の暴走が止まらない」といった声が多数上がっています。
冤罪は誰にでも起こりうる問題です。今回はたまたま無罪が証明されましたが、証拠がなかったり、弁護士が適切に動けなければ、人生を失っていた可能性もあったのです。
今後は、捜査のあり方や、供述偏重の取り調べ手法を見直す動きが求められています。
■ まとめ
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小山直己さんは2023年に死体遺棄容疑で逮捕されたが、2024年に無罪が確定。
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拘束・取り調べを行ったのは愛知県警中署。
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警察官は「刑事の勘でわかる」として逮捕を主導。
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冤罪確定により、損害賠償請求の可能性が高い。
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今後の捜査制度改革と警察の説明責任が問われる。
冤罪の恐ろしさと、無実の人を守る司法制度の大切さ。小山さんの声が、これからの社会を変える一歩となることを願ってやみません。
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